研究

当研究室では、量子ビーム・放射線を利用した研究開発を行なっております。

量子ビーム分析技術や各種放射線計測・イメージング技術を開発することで、環境・生物・医学等の様々な分野に応用可能な技術や全く新しい光・量子デバイスの開発が可能です。また重粒子線がん治療技術に代表される量子ビーム医療応用に即して必要とされる検出器・線量計測素子や計測技術の開発研究を通じて、社会貢献を目指しています。

主要共同研究機関: QST


業績リスト

 主要 業績リスト-JST researchmap (Link: researchmap) をご参照ください。

Google Scholar による論文リスト (See: Google Scholar)

ORCID / J-Global / ResearchGate


量子技術の研究開発

  • 1) 量子情報科学・工学デバイス実現を目的とした量子ビーム微細加工

量子情報科学・工学で必須となる量子情報操作系の将来的な候補材料として、ワイドバンドギャップ半導体内部の蛍光中心による単一光子源(Single Photon Source: SPS)により成り立つ量子ビットに注目が集まっている。これらの量子ビットを効果的に形成する手法として、荷電粒子微細加工技術を高度化し、その選択的形成技術を開発中である。


重粒子線がん治療場向けの計測技術開発

  • 2) 重粒子線用線量分布計測素子の開発

本学重粒子線医学研究センターの協力の下,重粒子線がん治療装置における線量分布計測用の素子を開発している。まず、放射線線量の計測に用いられているリン酸塩ガラス線量計素子に着目し、将来の粒子線治療で有効となるμmスケールでの線量読み出しが可能な小型素子を新たに開発した。さらに蛍光中心となる微量添加元素を変更することで、放射線照射量に対する蛍光中心の形成に差異が生じることを明らかとした。

さらに現在(3)で開発した各種半導体検出器を導入し、群馬大学医学部、豪州ウーロンゴン大学、仏国原子力代替エネルギー庁との国際共同研究において新たな線量評価技術の創生と標準化に向けて研究を進めている。

  • 3) 放射線・光・電子を対象とした量子計測開発

重粒子線などを含む荷電粒子、光、放射線など各種量子を検出することに特化した検出器やそのシステムを開発した。とりわけ固体飛跡検出や、電離測定, RPLやOSLといった現象を活用した検出器の開発や,新しい材料である SiC, ダイヤモンドを活用した検出器を新たに実現した。国際共同研究の枠組みの中で、特にダイヤモンド検出器については特性向上を図った。とりわけダイヤモンドで特徴的な過渡電荷減衰現象を確認し、その効果が電子・正孔の移動距離に依存することを実験的に明らかとした。これに加えて、膜厚6 μm程度の極めて薄いダイヤモンド検出器の開発に取り組んだ。


量子ビーム応用技術の研究開発

  • 量子ビーム分析・イメージング技術の開発

環境・医療・農学など幅広い分野における無機・有機物の化学組成解析要求に対応する分析技術の確立を目的に、イオンビーム分析技術の高度化に取り組んだ。荷電粒子が誘起するX線や発光に着目し、専用の検出器による信号計測から、トモグラフィなどを含めた画像処理技術を応用することで複雑な試料の分析を可能とする高度な分析体系を構築した。、特に大気中微粒子(PM)内部の元素組成や微生物由来有機物の検出・イメージングを応用例として遂行し、十分な感度があることを示した。現在本技術はPMの分析をはじめとして様々な分野の試料分析に応用展開が進められている。

群馬大学環境報告書2020年版に取り上げていただきました。


  • 高分子材料等を基板材料とする機能性光デバイスの開発

中短距離の光通信媒体として安価な高分子薄膜材料に着目し,集束イオンビーム微細描画(Proton/Particle Beam Writing: PBW)技術を用いて薄膜材料内部にフレキシブルな導波路構造を形成する技術を開発した。とりわけイオンビームが局所的エネルギー付与を伴うことに着目し、イオンが誘発する屈折率変化を薄膜局所部位に集中させることで、折り曲げ可能な高分子薄膜にマッハツェンダー型光導波路デバイスを実現した。本導波路の光分岐路構造の一部にヒーターを取付けることにより、通信機器としてのON-OFFを熱光学効果に可能とする光スイッチング機能の発現も確認した。このような通信路と同時に研究開発を進める固体材料中局所発光源や液晶などを活用した光機能性材料と組み合わせることでユニークな光デバイスの実現が可能となると考えられる。


外部資金獲得状況

文部科学省・学術振興会の研究課題:

  • 2020 – 2025 ナノメートルの分解能で元素分布を調べるナノ元素顕微鏡の開発
  • 2020 – 2023 ナノダイヤモンドセンサーによる単一細胞内物理・化学パラメータの時空間マッピング
  • 2018 – 2021 重荷電粒子がん治療装置での精密線量測定を目的とした薄膜型ダイヤモンド検出器の開発
  • 2017 – 2020 電子スピンの量子状態変化を検出原理に持つカロリーメータの開発
  • 2016 – 2018 ダイヤモンドによる固体内秘匿情報記録媒体の開発
  • 2015 – 2018 プロトンビーム直接描画を用いたフレキシブル光集積デバイスの実現
  • 2014 – 2017 高エネルギーイオン大気取出し窓兼位置敏感型検出器としてのダイヤモンド薄膜の研究
  • 2014 – 2017 エアロゾルの大気中環境動態を解明するためのイオンビーム顕微動態分析法の開発
  • 2014 – 2016 ダイヤモンドによるセンサー内包型細胞培養ディシュの開発
  • 2012 – 2016 数100MeV級イオンマイクロビーム安定化のためのビームモニタの開発
  • 2012 – 2014 大気中でのエアロゾル表面解析を実現するイオン顕微分光法の開発
  • 2008 – 2010 材料極表面高精度解析を目的としたイオンビーム複合分析手法の開発に関する研究